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APPRENTICEにみるアメリカ

“YOU are FIRED”(お前なんてクビだぁ!)

社会人なら(いや学生バイトでも)、誰かに向かって、こう言いたくなることは一度ぐらいあるはずだ。
でも、実際には、クビを切る権限がなかったり、権限はあっても人手が足りなかったり、人手は足りてても労働基準監督署が怖かったりで、ぐっと言葉を飲み込んでしまう・・・
(中には、少しでも気にさわることがあると「お前なんかやめちまえ」と騒ぐ人もいるんだろうけど・・・いや、別に特定の誰かを念頭に置いているわけではないのだけど・・・)

NBC系で毎週木曜日夜9時(ET)からやっているAPPRENTICEは、そんな世の人のストレス解消番組・・・というわけではないのだけど、Donald Trumpの”YOU are FIRED”というキメ台詞はNewsweekの表紙まで飾ってしまうぐらい有名になっている。
松井が住んでいることで有名なトランプ・タワーをはじめ、マンハッタンで数多くの不動産を管理・運営する大富豪のDonald Trumpが、何れ劣らぬ経歴の18人の男女を全米から募り、彼らを2チームに分けて毎週ある「お題」を与えて競わせる。勝ったチームには豪華ディナーやVIPとの懇談が待っているが、負けたチームはBoardroomに呼ばれて、さんざん責任のなすりつけあいをした後で、最終的にTrumpが一人を選んで”YOU are FIRED!”ということになる。

お題は毎週色々・・・子供相手の新しいおもちゃの考案だったり、新しい味のアイスクリームを作って売ったり、レストランのプロモーションだったり、犬相手のビジネスだったり・・・まあ、正直言って、本当にこれで実業家としての資質が分かるのか、疑問がないわけでもない

さて、しかし、この番組の見所はチームの勝負そのものではない。
見るべきは、負けチームの中での責任の擦り付け合いの凄まじさである。
ここには、「敗軍の将、兵を語らず」などという美学はひとかけらも存在しない。誰かが少しでも自分の非を認めようものなら、あっという間に集中砲火を浴びて蜂の巣状態になることは必至だ。
ともかくお互いに相手のミスは100倍にして、自分のミスは黙殺する。日本人なら「厚顔無恥」と非難の的になりそうだが、皆が皆同じような行動様式をとると、ある意味寸止めなしの格闘技のようなもので、逆にエンターテイメント性すら帯びてくる。

新しい味のアイスクリームを考案して、街角で売って、売り上げを競うというお題では、朝の動き出しの時間が相手チームより遥かに遅く朝の売り上げで大きく水を開けられた上に、屋台のロケーションで認可が必要なことを事前に確認していなかったために、屋台の移動を余儀なくされ、次の候補地について事前に考えていなかったので、放浪して時間を浪費・・・当然、大差で敗北。

← 問題のアイス(一般に売られてます)

普通に考えれば、どう見てもプランニング・ミスだし、マネッジに問題があるとしか思えないのだが、このときのプロジェクト・マネージャー(毎回各チームの一人が指名される)のIvanaは、屋台の場所を移動するときにStacy Jが「誤った情報」を伝えたために、合流が遅れたのが全ての原因だという主張を展開する・・・しかし、ちょっと待て・・・Ivanaの主張する「誤った情報」というのは、Stacy Jは屋台の場所を42ndの7th Avenueと伝えたけど、実際には42ndのBroadwayだったというもの・・・NYの土地勘が少しでもある人なら分かると思うけど、Broadwayと7th Avenueは、44thのあたりで交わっていて、42ndでも半ブロックも離れていない。ちょっと辺りを見渡せば、簡単に見つかる・・・そのことを指摘されても、なおIvanaは自分は悪くない、悪いのはStacy Jだと言い張る。ついには、Stacy Jはチームワークを乱すとか、単なる個人攻撃の領域に入り込んでいく。
・・・アメリカには「往生際が悪い」という概念はないとしか思えない。

ところが、結局、”FIRE”されたのは、チーム唯一の男性メンバーBradford。理由は、「ええかっこしぃ」だから・・・話すとややこしいが、Bradfordはその前の週に勝利チームのプロジェクト・マネージャーなので、本当なら今回はクビの対象とはならない・・・ところが、Bradfordは責任の擦り付け合いの最中に「自分はクビにされるような失敗はしていないと思っているけど、皆と対等の立場でいたいから、(クビ免除の)特権を放棄する」とか言い出す。その態度がいけすかなかったらしく、Trumpは「君は一番優秀だと思うけど、特権を放棄するなんてSTUPIDだ。そんなSTUPIDな奴は会社を駄目にするんじゃぁ」ということで、

YOU are FIRED

・・・正直、分かったような分からんような理由・・・というより、結局アイスクリーム勝負はなんだったんだ?・・・という感じで続いていく(なお、結局次の週に、Stacy Jは、「お前は皆に嫌われてるんじゃぁ」ということで、YOU are FIRED・・・Ivanaはその後はひっそりと目立たず生き残り中・・・)

ちなみに先週は、体は小さいが人の3倍は口が動くlawyerのStacy Rが「お前は口先ばっかりで責任をとらんのが気に入らんのじゃぁ」ということで、プロジェクト失敗と関係あるような関係ないような理由で”FIRED”・・・正直、プロジェクトとクビの理由の関係は、どんどん薄くなっているが、Trumpおじさんは自信満々。

Boardroomでの責任の擦り付け合いを見ていると、日本人にはこれはできないような、と思ってしまうけど・・・こんなことを平然とやれる国とお付き合いしなければならないわけで・・・日本の常識で物事を図ってはいけませんね。やっぱり
by 47th | 2004-10-28 11:08 | Impressions


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