写真で見たことのあるRADIO CITY HALLは、何だか多分昔からのファン(何せ30周年だから)のお年を召した方から、DREAM THEATERのT-シャツを着た長髪の見るからにメタル兄ちゃんまで色々な人々で溢れかえっていた・・・しかし、あれほどNYではどこに言ってもみかける「日本人」は、その日のRADIO CITYでは全然見かけなかった。
コンサートは30周年記念というに相応しいRUSH MUSICの集大成。本当にここ何年も聞いていなくても、体が覚えているというのはこのことで、”2112”や”MOVING PICTURES”の曲に、自然と体が反応する。個人的に嬉しかったのは、昔聞き込んだ”COUNTER PARTS”から”Animate me”をやってくれたこと(ただ、サウンド・プロダクションが今ひとつで音がこもり気味だったのが残念・・・)。
見所は色々あったが、圧巻だったのはニール・パートのドラム。コージー・パウエルこそ実物を見ることはできなかったものの(→痛恨・・・)、上手いと言われるドラマーは色々見てきた。でも、ニール・パートには参った。「手数王」とは、よく言ったものだ。ずらりと並んだタムやシンバル、カウベル(カウベルだけで何種類も用意するかな、普通・・・)、シンセパッドを、時には両手を交差させ、信じられないような正確さとスピードで叩いていくのを見ていると、本当に手が4,5本あるんじゃないかという気がしてくる。それ以上に凄いのは、その緩急自在のリズム感と構成力。
凄く極端な言い方をすれば、ロック系のドラマーの多くは「生きたリズム・マシン」で、こういうタイプのドラマーは曲のバックでドラムを叩いているうちはいいものの、ドラム・ソロなんかやらせた日には、見ている方からすると、その間にもう1曲やってくれ、という感じになる(典型は、日本でも(だけ?)人気があったMr.何某かのドラマー・・・バンドとしては、凄く好きだけど、あのドラム・ソロは・・・ベーシストが芸達者なだけに余計そのつまらなさが際立ってしまう・・・それ以前にリズム・マシンとしても×なドラマーもいるけど・・・)。けれども、ごくまれに打楽器であるドラムだけで、一つの音楽を成り立たせてしまうことのできるリズム・マスターとでも呼ぶべき存在がいる。こういうドラマーに共通しているのは、スネア一つの緩急と強弱だけで観客をひきつけることができるということ(THIN LIZZYのブライアン・ダウニーがそうだった)。
ニール・パートは手数で勝負したかと思えば、一転、スネア一つで勝負する。どんな場でもてんで勝手にしゃべりまくるNYの観客が、この時だけは固唾を飲んでニールのドラム・ソロに魅入っていたのが印象的だった。
NYに来て、コンサートのスケジュールをチェックすると、本当に驚く。マンハッタンではなかったのであきらめたけど、同じ頃ロングアイランドではDEEP PURPLE / THIN LIZZY / Joe Satorianiなんていう信じられないようなカップリングのコンサートが行われていたし(PURPLEにリッチーかジョンのどちらかがいれば、万難排して行ったかも知れないが、二人ともいないPURPLEって・・・)、他にもUFO, Michael Schenker (同じような時期にNYでやるとは。。。喧嘩とか起きなきゃいいけど), Kip Winger, TWISTED SISTER (まだ生きてたんだ・・・), FOGHAT (!!), Johnny Winter, YES, HEART, Motorhead, Dio, Anthrax, Monster Magnet, Lynch Mob, KANSAS・・・日本では消息もよく分からないアーティストたちが頻繁にライブをやっている(ここに挙げた名前が全て分かったら、大したものです)。
そして、何よりも、ぼくのMost Favoriteを5本挙げろと言われたら、THIN LIZZYと並んで絶対に外れることのない、Francis Dunnery・・・本物を見ることはできないかも知れないと半ばあきらめていた彼もまたNYでライブをやっていた。
チェルシーのさびれたライブハウスで、30人ほどの観客を相手に歌うフランシス・・・大げさかも知れないが、それだけでもNYに来た意味があったような気がした・・・その話はまた今度。